なぜ、この人と話をすると楽になるのか
今日は本の紹介です。
ニッポン放送の吉田尚記さんが書かれた「なぜ、この人と話をすると楽になるのか」です。
今年(2015年)の初めに話題になった本ですので、すでに「新しい本」ではなくなっていますね。
コミュニケーションの目的
コミュニケーションの目的って何でしょう。
「知って得するコミュニケーション術」とか、「必勝のプレゼンテーション」みたいな本、ありますよね。
「お金を儲けるためのコミュニケーション」とか、「自分をアピールするためのコミュニケーション」とか、何か違う気がします。
毎日熱心に釣りをしているひとりの男に投資家が話しかけます。「そんなに釣りが好きなら、もっと一所懸命やったらどうだ?」。船を出して魚がとれたら市場へ売りに行って、儲かったらもっと大きな船を買って人を雇って、さらに儲かったら船団をつくって会社にして、儲かったお金で会社を大きくしろよ---。投資家らしいですよね。
そこで男が投資家に尋ねる。「わかった。そうやって会社が大きくなったとして、最後はどうなる?」。投資家は答えます。「会社は次の世代の人間に任せて、儲かったお金で悠々自適にすごしなよ」。男「悠々自適って?」。投資家「好きなことができるんだよ」。そこで男は言います。「好きなことができるって?だったら釣りをするなぁ」。
本文中からの引用です。すごく分かりやすい話。出世をしたい、お金儲けをしたい、その理由を掘り下げると、心地いいコミュニケーションをとりたいからなんじゃないか。
どんなに偉くなってお金持ちになっても、実のあるコミュニケーションがとれない、楽しい思いができない、もしそうだとしたらどんなに虚しい人生だろうと思いませんか。そうですよね、すべての前向きな努力、すべての欲というのは、実りのあるコミュニケーションがとりたいってところに行き着くんじゃないでしょうか。釣り好きの男の目的がどうしたって釣りであるように、結局、コミュニケーションの目的はコミュニケーションであると、ぼくは思う。
激しく同意です。コミュニケーションは相手をやりこめたり、論破したり、自分の言いたいことだけを一方的に伝えることではないはずです。
この本は、心地よいコミュニケーションをとることに重点を置いて書かれています。「どうすれば自分の言いたいことが伝わるか」とか「どうすれば効果的に相手を納得させることができるか」なんてことはこれっぽっちも書かれてません。
コミュニケーションはゲーム
筆者は、「コミュニケーションはゲームだ」と言っています。ゲームだから勝者と敗者が生まれるわけですが、相手をやり込めたり、議論に勝ったりすることが勝ちではなく、心地よいコミュニケーションがとれたらみんなが勝ち。団体戦であると書かれています。
ゲームだから、その場その場で状況が変わり、いろんな状況に対応できるためのスキルが必要です。必勝法はないけれど、勝ちに近づく技術はある、と。努力によって、その技術は向上します。何のための努力かというと、心地よいコミュニケーションがとれるようになるための努力。
自分が、周りのみんなが、心地よくなるための努力なら、それは有意義な努力だと思います。
何でもない会話
何でもない会話が続くと、なぜか楽しい気持ちになるものです。女子会なんかはその最たる例。
その「何でもない会話」が何かを生み出すものであるかはどうでもいいんです。そんな損得勘定は抜きにして、心地よいコミュニケーションをとれるようになるためのお話がたくさん書かれている本です。
コミュニケーションをとることに苦手意識を持っている人、いますよね。私もそうです。
何か自分が伝えなきゃいけないんじゃないか、とか、何を話せばいいんだろう、とか、話す前から緊張して、話してるときも緊張して、話し終わったら疲れ果てて。これってすごく不毛じゃないですか。
話すことって辛いことじゃないはずです。だって、辛いことだったら人間は話をするようにはなってないはずですよね。でも、人間はサルから進化して、話をすることを覚えて、それが今の世になっても消えてない。つまりそういうことのはずです。
コミュニケーションに苦痛を感じるのは極めて不正常な状態だと思うんです。その不正常な心の状態を少し楽にしてくれる本だと思いました。
Kindleで読みました
私はこの本を先日買ったKindleで読みました。快適ですね。持ち歩くにもかさばらないし、軽いし。何より紙の本よりも価格が安かった。
なんだかコミュニケーションに対する認識が少し変わった気がします。おすすめの本です。