数学奇人たちの生態 第2回「タクシー数」

「タクシー数」というタイトルを見て、数学奇人たちはすでに、何のお話かわかっていますよね。

アインシュタインを超える天才「ラマヌジャン」

一般の人達は、何のことやら分からないと思います。

まずは、史上最大級の数学奇人を紹介します。「シュリニヴァーサ・ラマヌジャン」です。

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1887年生まれのインドの数学者です。天才的なひらめきにより、「インドの魔術師」の異名を取りました。

例えば、

\dfrac1\pi = \dfrac{2 \sqrt2}{99^2} \displaystyle \sum_{n=0}^\infty \frac{(4n)!(1103+26390n)}{(4^n 99^n n!)^4}

なんていう式を、朝いきなり持ってくるんだそうです。「思いついた」とか言って。

はっきり言って、ありえないです。まず、\piっていうのが円周率で、これが3.14くらいの数だってことは皆さんご存知だと思うんですが、実は、この円周率、終わりなく続く数なんです。3.14159265358979323・・・って感じで。終わらないんです。規則性もないんです。繰り返し、とかないんです。

その「終わらない数」分の1って時点で、もうすでに意味が分からなくなってます。

それが、右側の辺の式を計算した結果と同じだ、って言うんです。そもそも、1103とか、26390とか、どこから出てきたんだよ、って思いますよね。

こんな、とんでもない式を、朝からいくつも持ってくるらしいんです。毎日。それを、お弟子さんか友達か知りませんけど、一日中かけて証明するらしいんです。

実は、式を持ってこられてそれを証明するのって、大変ですけどレベル的には低いんです。ゴールが見えてますからね。書かれている式が出てくるように計算していけばいいのですから。

でも、そのゴールを思い付くって、とんでもないんです。なんで思いつくのか、その意味がわからないんです。上の式、どうやって頭のなかに浮かんだのか、理解できないんです。

ラマヌジャンは、「夜寝てたら、女神様が教えてくれた」って言うそうです。全く意味がわからないんですけど。

タクシー数

ラマヌジャン、病気になって入院してたそうです。師匠のハーディっていう博士が、お見舞いに行きました。

乗ってきたタクシーのナンバーは1729だった。さして特徴のない数字だったよ。

このハーディって博士も、かなりの数学奇人です。お見舞いに行って、いきなりこんな話をしませんよね。ここで、間髪を入れずラマヌジャンが答えるんです。

そんなことはありません。とても興味深い数字です。それは2通りの2つの立方数の和で表せる最小の数です。

つまり、こういうことなんです。

12^3 + 1^3 = 1728+1=172910^3 + 9^3 = 1000 + 729 =1729

という、(3乗)+(3乗)の形で2通りに表すことの出来る数の中で、一番小さいのが1729だ、って即答したんです。

ええええええええええ!!って感じです。はあああああああ!?って感じです。はい、奇人確定です。

乗ってきたタクシーのナンバープレートの数字をいきなり言われて、即答でこの会話ですよ。おかしいです、この人。

この「1729」を「タクシー数」とか「ハーディ・ラマヌジャン数」とか言うそうです。

アインシュタインとの比較

史上最高の天才と言われるアインシュタインですが、ラマヌジャンと比較されたときに、このような評価があります。

アインシュタインがいなくても、相対性理論は誰かが発見しただろう。

しかし、ラマヌジャンがいなければ、彼の公式の大半は今でも見つかっていないだろう。

また、このようにも言われています。

アインシュタインが相対性理論にたどり着けたのは、科学の発展という流れの中で必然的に起こることとして位置づけることができる。

しかしラマヌジャンの場合、どこからその発想が出てきたのか全く見当も付かない

まさに天才のひらめき。史上最高の数学奇人・ラマヌジャンです。